だんまりと黙り込んでしまったせいか、隣の瑠衣斗が顔を覗き込んできた。


いきなり目の前に現れた瑠衣斗の顔に、思わず心臓が激しく跳ねた。


頭からは冷や汗が吹き出してきたようで、背中から腰にかけて汗が伝うようだ。



「そうか…?元気ねえぞ?」



心配してほしいんじゃない。
気に掛けてほしい訳じゃない。



だから……そんな瞳で見ないで。



モヤモヤとするこの胸の辺りの違和感を、どうすればいいか分からないだけ。


何度か経験した事のあるこの感覚に、私は未だにどうすればいいか分からない。



「龍雅がうざいだけ」


「俺かよー!!ゴメンって!!」




そんなセリフを無視して、胸のモヤモヤを打ち消すようにグラスに入った飲み物を飲み干した。


こんな時、何故慶兄の顔が浮かぶんだろう。


いつも私の気持ちをすぐに汲み取り、優しく包み込んでくれた慶兄に、やっぱり胸が痛む。



背中を押してくれた慶兄に、褒めてもらいたい。


いつまでも甘えているばかりでは、私だって嫌だ。



「龍雅も慶兄みたいだったら良かったのにね」


「はは、間違いねえなあ〜」



嫌味で言った私のセリフに、宗太が笑いながら同意する。



「医者か!?医者になればいいのか!?」



「……勝手になれ」



きっと人より特殊な思考回路なんだろう。


そんな龍雅に、やっぱり瑠衣斗が冷たく言い放った。



それからも、ギャアギャアと騒がしく食事を続けながらも、私は沈む気持ちのまま気分が浮上する事はなかった。