声を押し殺して泣く私を、瑠衣斗が優しく頭を撫でてくれる。


この切なさは、何だろう。



今までの慶兄の優しさが、走馬灯のように駆け巡る。


人は何でこんなにも贅沢な生き物なんだろう。



私から手を離したようなモノなのに、慶兄を傷付けたのに。



何で涙が止まらないんだろう。




慶兄の優しさは、私にはもったいなさすぎた。


私に慶兄は、もったいなさすぎたんだ。




「……慶兄に…悪いことしちゃった」


「気にすんな。あいつ図太いし」


「はは……っそっか」




次会う時は、とびきり笑って会いたい。


背中を押してくれた慶兄に、笑っててほしい。


幸せになってほしい……。





「あのさ」


「……なに?」


「……うん、えっと…」



私の頭を撫でていた手を止め、瑠衣斗が何か言いたそうに言葉を詰まらせる。


グッと涙を拭い、顔を上げた。


チラチラと目を合わせながら、何故かどもる瑠衣斗が珍しく、思わずじっと見つめた。



「……どうしたの」


「え、あ…あ〜…いや、やっぱいい」


「はあ?」



一体どうしたんだろう。


グシャグシャと前髪をかきあげる瑠衣斗に、疑問が残る。