「おーす」
「……ただいま」
いつものように騒がしい部屋のドアを開け、慶兄に続いて部屋へと踏み入れた。
ドキドキする胸を押さえながら、顔が引きつるのが分かる。
「おー!!慶兄久々〜!!」
「龍雅は相変わらずうるさいなあ」
すんなりと入ってしまう慶兄に対して、躊躇している自分が変に思える。
あれ?るぅとジュリが居ない………。
部屋には、宗太と龍雅二人しか居なかった。
慶兄は、そのままでいいと言ったし、深く考えるなって言ったけど、そう簡単に出来るはずない。
龍雅と宗太の視線が、今の私にはとても痛い。
「あれ?瑠衣斗は?」
「あ〜、ジュリ送ってったよ」
慶兄から出た瑠衣斗の名前に、冷や汗が出るような感覚が頭から全身に広がる。
「やたらジュリに気に入られてんな。アイツ」
そう言って空いてるソファーへと腰を降ろした慶兄に続き、床に座る宗太と龍雅に向き合う形でテーブルを挟んで腰を降ろした。
「…………」
「…………」
二人の視線が、私と慶兄を行き来する。
思わず目を合わせられなくて、目線だけを落とした。
「……どうした…の?」
珍しく控え目に言う龍雅に、ついに手に汗が出てきた。
やっぱり……気付くよねえ?
いつもなら、慶兄に引かれるがままに慶兄の隣にいつも座っていた。
それが突然なくなれば、違和感があるだろう。
「喧嘩……?」
やっぱり控え目に言う龍雅に、もう私は何も言えない。
有り得ない程の緊張感に、肩が震えそうだ。
「いや?別れただけ」
「…………」
予想通りすんなりと言ってのけた慶兄の一言に、二人が固まった気配がした。