私は、慶兄と付き合って変わったのだろうか。
自分では分からない。
まず、素直に気持ちを表に出すと言う事が、正直まだ分からない……。
子供のように素直になれたら、私の世界も広がるのだろう。
私は、るぅが好き。
でも、今は何だか素直に認めたくないんだ。
慶兄は背中を押してくれたけど、何だか自分でその気持ちを認めたくないんだ。
瑠衣斗との約束は、やっぱり分からないままで、すぐには前に進めそうにもない。
気持ちを伝える事も、やっぱり考えられなかった。
「あ〜…あいつらうるさいだろうなあ」
「う〜ん…確実に」
もう、隣を歩いていても手を繋ぐ事はない。
いつもの事が急になくなると、やっぱり寂しいなんて思うのは、贅沢なんだろう。
好きなのに自分から身を引くなんて、絶対に辛いと思う。
それに、これからも普通に接していくなんて、きっと私にはできない。
そう思うと、慶兄はやっぱり大人だから表に出さないのだろう。
私なんて、りなさんの存在だけで逃げ出してしまったのに。
慶兄の優しさは、さり気ないけど深い。
それに、それを感じさせないからすごい。
優しく見下ろす慶兄は、今も昔も、ずっと変わらない。
ちょっと強引で意地悪で、たまにびっくりもしたけれど、そんな意外な一面も付き合ってなかったら見れなかった。
慶兄の気持ちを、無駄にしたくない。
でも、今は少し一人で考えたい。
「もも」
「ん?」
「頑張れよ」