「俺にはこんないい女、もったいね〜」


そう言って笑う慶兄に、もう何も言えなかった。


慶兄の決意は固い。


そんな気持ちが伝わってくる。


慶兄の気持ちに、私は応えなきゃいけないんだ。



これだけ思ってもらえて、私は本当に幸せ者で、罰当たりだ。





「慶兄は…私には良い男すぎたよ」



そんな私の言葉に、一瞬慶兄が驚いたように目を軽く見開く。


でもそれもほんの一瞬で、すぐに慶兄が笑って見せた。


「まーな。るぅには負ける気しねえ。だてに歳くってないしな」


「だからおっさんなんかじゃないって」


「待て、おっさんなんて言ってねーぞ」



ねえ、慶兄。これからもずっと近くに居てね?


我が儘でごめんね。


こんな私で……ごめんね。


慶兄…………



「ありがとう…慶兄」


「…はいよ」



こうして、私と慶兄は終わった。



でも、関係が終わった訳ではない。


これからも、ずっと繋がりはなくならない。


無くしたくない。



「ごめん、じゃなくて、ちゃんとありがとうって言えるようになったな」


「……そうかも…」


「やっぱ俺って出来る男だな」


「本当にね」



私達は大丈夫。これからも普通に関わっていける。


慶兄が慶兄で良かった。


すごく大切にしてくれて…ありがとう。


「んじゃー…行くか」


「うん」