嗚咽が喉を詰まらせる。


言葉を発しようとすればする程、喉の奥に飲み込まれてしまう。



すっかりアイスコーヒーの入ったグラスは、汗をびっしょりとかいてしまっている。


殆ど口をつけられないまま、氷だけが小さくなってしまった。



「俺は、そんな事一度も考えなかった。殆ど無理やりだったしな、それに……初めからももの気持ちは知ってたぞ?」


「っでも…でもっ」



それじゃあ…慶兄は何のために?リハビリだけじゃ分からない。そもそもリハビリの意味が分からない。


辛くないの?慶兄はそれで良かったの?




「言っただろう?俺のわがままだって。それに……」


「……それに…?」



そっと親指で私の涙を拭いながらも、慶兄は優しく微笑んでいる。


「俺の事、ちゃんと見ようとしてくれた」


「……えっ…」


「それだけで十分。こうやって引き止めてもらえただけで…もう十分」



もう、何が何だかさっぱり理解できない。


優しい大きな手のひらが、そっと頬を撫でてから離れてしまった。


もう、この手を掴む事はできない。


初めから、慶兄には分かっていた結末。



私のために、こんなにも考えていてくれたんだ。



「さよならじゃねーぞ?」



唇が切れるんじゃないかという程、強く唇を噛み締めた。



「またな、だぞ」



この人は、どこまで優しいのだろう。