「いらっしゃいませ〜。お一人様でございますか?」
「あ、はい、えと待ち合わせで」
「お連れ様は居られますか?」
「いえ、まだです」
少し重い扉をあけると、中からひんやりとした空気が頬を掠めた。
中まで入ってしまうと、火照った体と滲み出た汗が冷やされ、何とも言えない溜め息を吐き出した。
「では、こちらへどうぞ」
ウエイトレスの女性に続き、席へと案内された。
こじゃれた店内には、サラリーマンや私と同じような学生が居たりして、結構な賑わいだ。
「ご注文はどうされますか?」
「あ〜…えっと、アイスで」
「かしこまりました」
去っていくウエイトレスを見送り、ふうと息を吐いた。
いそいそと肩に掛けていた鞄を下ろし、中から携帯とシガケースを取り出した。
煙草を一本取り出し、口に加えて火を付け、一息着く。
何だか落ち着かない。
吐き出された煙は、エアコンの風によってすぐになくなってしまう。
壁掛けになっている時計が目に入ると、時刻は間もなく待ち合わせの13時を指す所だ。
やっぱり落ち着かない。
何だかモヤモヤする気持ちをどうする事もできず、もう一口煙草を含んだだけで、すぐにもみ消した。
「お待たせしました」
「あ、どうも」
タイミング良く運ばれてきたアイスコーヒーを、ウエイトレスが手際よくテーブルに並べると、一礼して去っていく。
そんな姿をただぼーっと目で追うと、突然目に入った人物に胸が飛び上がった。