「渡したい物って?」


私がそう尋ねると、彼女はカバンから小さな手帳を取り出した。


「それって…」


見覚えのあるその手帳に、私は思わず目を見開いた。


「そう、晃太くんの。」


そうだ。


真っ黒の小さめの手帳。


これは前に私が誕プレとしてあげたものだ。


すごく喜んでくれて。


でも、何でそれを荒木さんが…?


「彼が亡くなるちょうど3日前に預かったの。」


「預かった?」


不思議そうに首を傾げると、彼女は一度頷いて、それからゆっくりと口を開いた。


「彼、わかっていたんだと思うの。自分の命が残り僅かだってこと。随分前から。だからあなたを遠ざけたんじゃないかしら?」


「何で…」


「それ、見てみて。」


そう言って指差した先には、コウくんの手帳。


不思議に思いながらも、言われた通り手帳を開いてみた。