そんな家庭状況やったから、あたしが家事全般をやらざるを得なかった。

あたしが、弟とあたしの晩ご飯を作らないといけない。
それでなくても、弟は成長期。
栄養も考えてあげないと…。
お母さんがいた頃は、毎日温かい晩ご飯がちゃんと用意されてて、栄養の事なんて考えた事もなかった。

洗濯物だって、かごに入れておけば、キレイに畳まれて返ってくる。
冬場の洗濯…あまりの寒さに手が赤くなって、感覚がなくなる位ピリピリと痛い。
あたしが洗濯物を干すのは、どんなにがんばって急いでも、夜になってしまう。
体中がガタガタ震える…。
「寒い…ハァ~、ハァ~」
手に息を吹き掛けながら洗濯物を干す。

ベランダから見える近所の家からは、おいしそうなごはんの匂い。明るい窓…
悔しくて涙が出そうになる。
でも、絶対に泣かない!
近所の人、友だち、学校の先生…
あたし達家族を取り巻くみんなに、心配されたくなくて、同情されたくなくて、あたしはひたすらがんばった。
でも…
正直疲れもストレスも溜まっていた。

誰かに頼りたくても、甘えたくても、誰にも言えない…。
何かに当たり散らしたくても、何に当たればいいかわからない…
いつも、近所のおばちゃんに、
「ゆみちゃんはほんまにがんばって、えらいなぁ…おばちゃんにできる事があったらいつでも言いや!」
って言われても、
「おばちゃんありがとう!でも、全然大丈夫やで!」
って、精一杯明るく笑顔で返事をする。
心の中で泣きながら…
毎日家事が終わるたびに思う。
『お母さんって、こんなに大変やったんや…』

でも、許さない!絶対に許さない!
お母さんの嘘つき!

その気持ちが、あたし自身をどんどん追い詰めていく。
お母さんなんていなくても、全然大丈夫やもん!