夜も更けた午後十時。薄暗い公園でかすかに光る池の水と少しの電灯。
手は繋いでない、寒いから二人ともポケットの中。
でも、片っぽの手はわざとらしく出し入れしたりして。

一番細い橋の上で二人の距離がわずかに縮んでく。

ふいに彼が携帯を手にとった。
「ねぇ、これ聞いて」

 着ウタのイントロが流れる。アクアタイムズの『等身大のラブソング』。
『百万回の愛してるなんかよりも一度ずっと抱きしめた方が早いだろ
なぁ、俺みたいな恥ずかしがりはこんな伝え方しかできないけど』

携帯を閉じて彼が呟く。

「俺、すごい共感できるんだよね。かなり不器用だから」

そういって彼はそっと手を差し出した。

電灯のわずかな光が彼の手をキラキラと演出させる。
私はそのキラキラを掴むようにぎゅっと握った。
すごくあたたかくて今まで寒かったのが嘘みたいだった。

「俺、こんなんだけど…」
「大好きだよ」

私は思わず彼の頬にキスをした。
 二人の距離はこれでもかってくらい縮まった。

私と彼、二人だけの秘密のラブソング。