「ただいま」

「さあやちゃんお帰りなさい」

パタパタと玄関まで

おかあさんが

走ってくる。


いっつもこうやって


『お帰りなさい』


何かの儀式みたいに

わたしを

笑顔で、出迎える。


別にそんな事しなくていいのに。


「今日は遅かったね」

「あ……」


門限は21時。

今は21時半を少し過ぎている。


「お父さん、待ってらっしゃるわよ。

あとはさあやちゃんが揃えば

夕御飯開始!」

「……ごめんなさい。帰り遅くなりました」


「んーん。いいのよ。リクから聞いてる。

今日学校でツリーの点灯式があって

『なんか友達と凄い盛り上がっていた』

って、言っていたから。

イルミネーション良いわよね

私も見に行きたかったなあ

今週末、けやき坂にお買い物行っちゃおっか」


「リク……?」

「もー、あの子

今日はちゃんと帰ってきたの

だから五人で御飯。

お父さんも喜んでるわ」