でも多分、槙さんだからなんだと思う。




それに、槙さんほどスーツが似合う男、そうそういないだろうし。




「槙さん。……すき」




あたしは思ったことを、ふと呟いた。




槙さんは黙ってあたしの手を引っ張って歩く。




次第に目の前に広がり始めるのは、
今までに見たことないような景色。




それは、何故か、あたしの過去の記憶を、疼かせた。




「……俺も、好きだよ」




槙さんのキスが、
優しく唇に降って来る。




自分の中に、こんなに優しい気持ちがあるなんて、槙さんと出逢って、初めて知った。