槙さんは、少し困ったように、
眉を下げて笑った。




「さ、降りて」




「え?」




いつの間にか、車は、“車道”とは呼びにくい、山道に入っていた。




「こっから、車入れないからさ」




その言葉で、さっき槙さんが、“景色綺麗なとこ”と言っていたのを思い出す。




「う、うん」




「ほら」




槙さんが、車を降りようとするあたしに、
手を差し出す。




あたしはその手をゆっくりと握り締め、
車からそっと降りた。