いけない、いけない。




すぐに、自分の世界に入ってしまうのは、あたしの悪い癖だ。




「槙さんは、生まれも育ちも東京だっけ?」




「そうだよ。どうして?」




「あたし、こっち来てもう、8年くらい経つけど、まだ慣れないよ」




「結婚したら落ち着くよ」




「……そうだね」




頼じゃなくても大丈夫かもって思えたのは、槙さんが初めて。




少なくとも、槙さんはあたしを、
大事にしてくれている。