「にーんじん♪…たまーねぎ♪……」

あたしはハミングしながらトントンと野菜を切る。


実はあたし、こう見えてもお料理は得意なのだ。

うちは両親共働きの家庭なので、いつの頃からか、食事は美雨ちゃんかあたしのどちらかの担当になった。

といっても、あたしのレパートリーが増えたのはごく最近。

それまでは、今作ってるカレーがあたしの唯一の得意料理だった。


近所のスーパーに行って材料を揃えた。

お鍋一つでできる料理で、小分けしてフリージングすれば日持ちするもの。

やっぱりカレーかなぁって。

炊飯器もなかったから、ご飯はレトルトのものを買ってきた。


お肉は蓮君の好きなチキンをあらかじめ塩コショウして軽くソテーする。

にんじんは蓮君が嫌いだから、できるだけ小さくみじん切りにした。

子供の頃から一緒にいたから、彼の好みはそれなりに理解しているつもり。

ルーは市販の物を使ったので、あっという間にできちゃった。


あたしはボスっとベッドに体を沈めた。

体を横にしたとたん、疲れている自分に気付いた。

ぼんやりと白い天井を眺める。

さっき見た写真がちらつく。

あたしはギュっと目を閉じてそれをかき消そうとした。


――もうすぐ蓮君、帰ってくるかなぁ……。


やがてあたしの意識は途切れた……。