あたしは歩道の段差につまづいて、転んでしまった。


「痛っ……」


すぐに立ち上がろうとしたつもりが、ストンとまた座り込んでしまった。

転んだ拍子に足首をひねったのか、ズキズキと鈍い痛みがする。


「バカ……。何やってんだよ」


いつの間にあたしに追いついていたんだろう。

蓮君があたしの目線に合わせるようにしゃがみこんでいた。


「だって……。あの人達、蓮君のこと誤解してるから」


「だから、誤解されててもいいんだって。オレがフッたの。嫌われるぐらいでちょうど良いよ」


「だって……だって……」


あたしはフルフルと首を振った。

そのせいで、涙が出てきた。

何の涙なのかわからない。

さっきお店で我慢してたせいなのか、自分でもこの感情を説明できないでいる。

だけど、何かがグッと押し寄せて制御できない。


「……あの人、蓮君のこと『サイテー』って、言ったもん。……ヒィック…蓮君は最低なんかじゃないもん。蓮君の良いとこ、あたしいっぱい知ってるもん……」


蓮君は最低な人なんかじゃない。


忙しいのに、時間を空けて会ってくれた。

あたしのためにアイスティーを用意してくれた。

恋人でもないのに、手繋いでくれた。

溶けそうなスプーンの中のアイス、食べてくれた。

あたしのバカなお願い、なんだかんだ言っていつも引き受けてくれた。