一人は緩くウェーブのかかったショートボブ。

もう一人は、腰まで届きそうなストレートロングヘアの女性。

二人ともじっと蓮君を睨んでいる。


みるみるうちにショートボブの女の人の顔が歪み、その瞳に涙が溜まり始めたと思ったら、踵を返して走って行ってしまった。


と同時に、パシッ！　と響く音。

あたしは一瞬何が起こったかわからずうろたえてしまい、蓮君がロングヘアの女性に殴られたと気付くのにかなり時間がかかってしまった。


「もう……新しい女？　優希がまだ蓮哉のこと好きなの知ってんでしょ？　あんたって、サイテー！」


ロングヘアの女性はそれだけ言うと、去って行ったショートボブの女性を追いかけて行ってしまった。


新しい女？

って、あたっ……あたしのこと？


これって……これって……


「蓮君、誤解されてるよね？」


あたしは蓮君の前に回って、殴られた頬を押さえている彼の顔を覗き込んだ。


「あの人、ひょっとして蓮君の彼女？」


そうとしか思えなかった。

きっと最初に走っていったショートボブの女性は蓮君の彼女なんだ。


「誤解、解かなきゃ…」


そう言って、走り出そうとしたあたしの腕を蓮君は掴んで引き止めた。