あたしのセリフがまだ終わらないうちに、蓮君は吹き出してアイスティーをこぼした。


「は……? いきなり何それ?」


蓮君は慌ててティッシュで、服や口元を拭う。


あ……やば。

あたし、また誤解されるような言い方しちゃったよ……。



「あ! ホントにしなくていいんだってば! フリだけでいいの」


あたしは両手を前に突き出して振りながら、慌てて否定する。


そして、小説の中のシチュエーションを説明した。


「二人の位置はちょうどこんな感じでね」


あたしは自分達の座っている位置を指す。

あたしは床にペタンと座っている。

蓮君は片方の足を投げ出し、もう片方は膝を立てて座っているような状態。

あたし達の間には30センチぐらいの空間がある。


「これぐらいの位置から顔を寄せてキスってできると思う?」


そう、今ちょうどキスシーンの描写を書いているんだけど、この位置で上手くキスができるのか試してみたかったのだ。


「んー。できんじゃね?」


そう言って、蓮君は顔を傾けてあたしに近づいてくる。

―――ドクンッ

なぜか急にあたしの心臓の動きが早くなる。