「で……。そこはこの公式を使って……うん。そうそう……」


あたしは今、数学の個人レッスン中。

先生はもちろん大輔君。

大輔君の教え方ってすごく丁寧でわかりやすい。

はっきりいって、田中先生より上手いんじゃないか?

なんて思ってしまう。



「わーい! できたー!」


あたしはノートを掲げて体全体で喜ぶ。

大輔君のおかげであっという間に問題を全てクリアできた。


「よく頑張りました」


なんて言いながら、あたしの頭を撫でてくれる大輔君。

うっ……。

大輔君て、頭触るのクセなのかなぁ……。

こういうのに慣れていないあたしは、そんな些細な行動にもいちいち反応して顔が赤くなってしまう。


「ありがとう。大輔君って教えるの上手だよねー。先生になれるよ!」


「ははは……。だって、オレ先生だもん」


「え? そうなんだ?」


「うん。バイトね。カテキョやってんの」


「家庭教師……」



その言葉にあたしの妄想アンテナが動き出す。

きゃぁああ。

もしもよ?

こんな素敵な人が家庭教師だったら……。

家庭教師と教え子の恋かぁ……。


あ……だめ。

想像しただけでクラクラしちゃう。



「そ……それって、生徒から告られたりしないの?」