「……なたっ……日向」
遠くで誰かが呼ぶ声がする。
邪魔しないでよ……。
まだ眠っていたいのに……。
あたしは重い瞼をそっと開けた。
ぼんやりとした視界に誰かの顔が映っている。
「蓮君……?」
あたしはその人の名をポツンと呟いた。
「え? 蓮君?」
パチンと目を開けて、慌てて体を起こした。
途端に、軽い眩暈を起こして、こめかみに手をやる。
「おい……大丈夫か?」
蓮君が心配そうにあたしの顔を覗き込む。
「うん……平気。ここ……病院?」
「ああ。お前、気失って運ばれたんだよ。念のため検査入院だってさ。ちなみにオレも……」
病院で貸し出されたのだろうか、蓮君はあたしと同様に薄い生地の前あわせのガウンのような物を着ている。
一息ついてからあたしはハッとする。
「蓮君、無事だったの? 怪我は?」