慌てて後を追う。


あたしの目にはもう彼の背中しか映っていなかった。


――だから……。


だから全然気づいてなかったんだ。


右折しようとしている車が横断歩道に近づいていたことなんて……。



「蓮君!」


後もうちょっとで彼に近づく。

触れられる……。


そう思った瞬間。

蓮君があたしの声に気づいて振り返った。


「日向っ!」

蓮君のその声と


「あぶない!」

誰かの叫び声


そして耳を塞ぎたくなるような、アスファルトとタイヤのこすれるような音……


その全てが同時にあたしの耳に入った。






――ドンッ