あまりにもふいうちだったため、あたしは目をパチパチして驚くことしかできない。


それは触れるか触れないかぐらいの優しいキスで、ハチはすぐにその顔を離してくれた。



だけどあたしは、その時になってようやくハチの様子がいつもと違うことに気づいた。


いつも冗談ばかり言っていて、子供みたいに無邪気に笑ってて……

あたしの知るハチはそんな感じだった。

だけど今日は違う。

ハチはリモコンを手から滑らすように下に落とすと、黙ってジッとあたしの目を見つめる。

その表情はまるで感情を無くしたかのように見えた。


――怖い。

本能がそう感じた。

寒くもないのに、なぜか体が震えだす。


「……ハチ?」


この場の空気を変えたくてあたしは震える声でつぶやいた。


ハチの手が伸びてきてあたしの肩に触れた。


「キャッ……」