前に小説のためにキスの仕方を教えてもらった時

――『ファーストキスは好きなヤツのためにとっとけ』

蓮君はそう言ってた。


ファーストキスの相手が好きな人で良かった。



「……日向?」


ハッとして顔を上げると、ハチがあたしの顔をじっと覗き込んでいた。


いけないっ。

あたしったら、ボーっとしちゃって……。

そうだ。

今日はハチに自分の気持ちを伝えるために来たんだった。



あたしはゴクリと喉を鳴らしてから、ハチの方へ体ごと向いた。


「は……ハチ。あのね……聞いて欲しいことがあるの」