ハチがリモコンを操作してから数秒。



――ズンッ


ベースで始まる、特徴のあるイントロが部屋に響き渡った。


それがヤマジシンイチのアルバムのものだということはすぐにわかった。


オーディオ機器のことはよくわからないのだけど、スピーカーにもこだわりがあるんだろうか、低音があたしの体の芯をズンズンと揺さぶる。

いつも自分の部屋で聴いているのとは、ちょっと違う感じだった。



そう言えば、蓮君の部屋でもヤマジシンイチのアルバム見つけたんだよね。

あたしったら興奮してはしゃいじゃって……。

偶然にも二人とも8曲目がお気に入りだってことがわかって……。


ヤマジシンイチの歌声を聴きながら、あたしはあの日のことを思い返していた。


あの日初めてあたしは自分の気持ちに気づいたんだ。

――蓮君が好きだってこと。


そういや……あの時、蓮君の前髪を結んだっけ。

ちょこんとおでこなんか見せちゃって。

その顔があんまり可愛いから……あたしってば、自分からキスしちゃったんだよね。


考えてみれば、あれってファーストキスだよね。


良かった。

蓮君がファーストキスの相手で。