無理だよ……。

こんな状況で男の子の部屋に上がるなんてできるわけない。


「だ……ダメだよ。それはダメ」


「あ……今、エッチなこと想像したでしょ?」


ハチはあたしの手首を解放すると、パッと振り返った。


そしていつものような人懐っこい笑顔をあたしに向ける。


「考えすぎだっつの。今、うち親いてるし。日向のエッチ――!」


ハチはからかうようにクスクス笑ってる。


「ちょっ……何言ってんのよ!」


あたしは真っ赤な顔で抗議する。


そっか……。

家族がいるならヘンなことにはならないよね。

あたし、なに勘ぐっちゃったんだ。

なんか、ヤラシイ……。


「どうする? オレんち来る?」


勝手にハチを疑った自分が恥ずかしく思えて、あたしはコクンと頷いた。


「決定――!」


ハチは嬉しそうに目を細めると、またあたしの手を取って歩き出した。