大輔君は一瞬、驚いたように眼を見開いて、それからフッっと笑みをこぼした。


「うん。あいつも同じこと言ってた。オレのこと忘れないって。オレら、お互いに初めて付き合った相手なんだよね。あいつ……オレのこと好きだった気持ちは忘れないって言ってくれたんだ」


「うん……」


「『だった』って……その言い方が過去形だっつの。ははっ……。けど……なんかさ。その言葉に救われた気がした。もう過去のことだけどさ、オレらは確かにお互いに好きだったんだよなって改めて思えた。あいつの気持ち、ちゃんと聞けて良かったよ」


「……」


「あー。もぉ、だからそんな顔すんなって!」


大輔君の手があたしの背中をパシンと叩いた。


「……でも……」


それでもまだモジモジするばかりのあたしの頭を大輔君は手を伸ばしてクシュクシュと撫でる。


「ほんと、ヒナちゃんのおかげだよ。ありがとな」


「そんな……あたし何にもしてないよ。それに、今も自分のことすらどうしたらいいかわかんないし……」


「ヒナちゃん、なんか悩んでんの?」


大輔君はあたしの顔を覗き込む。


話してみ?――って感じで。


でも、何をどう話せばいいのかわからないあたしは、「ううん」と首を横に振った。


「……あのさぁ。ちょっと話変わるけどさ」


大輔君がまた話し始める。


「あん時、オレの部屋で幸樹がさ……あ、幸樹って覚えてる?」


あたしはコクンと頷いた。

そう、あの時はたしか大輔君の部屋で幸樹さんと恭子さんも一緒だったんだよね。


「幸樹がさ、蓮哉のこと、『不特定多数の女とつきあってる』みたいに言ってたでしょ?」


「うん……」


「あれ、ちょっと違うんだよね」


「えっ……」