「前に何かの本で読んだんだけど……『明日が来るのは当たり前のことじゃない』んだって」


綾乃はさらに話を続けた。


「人生なんてすぐ先には何が起こるかわからないでしょ? 明日どころか、1分先がどうなるかすら……誰も予想できないんだよ」


「うん……」


「例えばさ。大好きな人が、突然、事故にあって死んじゃうことだってあるんだよ? 後になって『あの時ああすれば良かった』……って思っても、もう遅いんだよ。だから後悔しないために、今の自分の気持ちに正直になってもいいんじゃないかな。それが誰かを傷つけることになったとしても……」


そう言って、あたしの目をじっと見つめる綾乃。


綾乃はあたしのことを言ってるんだ。

あたしは蓮君と美雨ちゃんのために、自分の気持ちを押さえようとしてる。

大好きな二人を困らせたくないから。


だけど……

言ってもいいのかな。


あたしもワガママになってもいいの?



「あたし、日向にも後悔してもらいたくないんだ」


「ん……」


言葉が見つからない。

答えも出せない。


だけど、綾乃の気持ちが痛いほど伝わってくる。