「ごめんね。内緒にしてて」


そう言って申し訳なさそうに肩をすくめた。


「前にあたし、日向に偉そうなこと言ったじゃない？　『先生を困らせたくないから告白しない』って」


「うん」


あたしはコクンと頷く。

だって、その言葉は今の今まであたしの胸に深く刻み込まれていた。

蓮君を想うあたしの気持ちと田中先生を想う綾乃の気持ちが重なっているようで、あたしは今までも何度もその言葉を思い返していた。


「それなのに、告っちゃったりしたから……かっこ悪くて言えなかったんだ。終業式の日に、公園で言いそうになったんだけど……」


「えっ……」


あたしは思い返していた。

そういえば、終業式の日に水鳥のいる公園で、綾乃は何か話そうとしていた。

あの時、律子さんに気づいたあたしが、綾乃の話を途中で止めてしまったんだよね……。


「そか。ごめん……あの時、話そうとしてくれたんだよね」


「うん。ま、ね。でも、正直ホッとしてたの。まだ話す心の準備ができてなかったからさ……でも、もう大丈夫だよ」


綾乃は髪を揺らしてニッコリ微笑んだ。


「……それで田中先生は、何て？」


あたしは綾乃の目をじっと覗き込む。


「それがね……」


綾乃はほんの少し身を乗り出してあたしにその時の話を聞かせてくれた。