「前って……いつから?」


「んーとね。夏休みに入る前だよ? あ、期末の最終日だ」


「期末テストの最終日……」


綾乃はクスクス笑う。


「ほらっ。ハチが日向を迎えにきて……日向、先に帰ったじゃん?」


あたしの記憶に、あるシーンが甦ってくる。


教室で綾乃と二人居残って話していた時、ハチが窓の外でピョンピョン飛び跳ねてあたしに手を振ってたあのシーンが……。



「あの後ね……あたし一人で数学準備室に行ったの」


「えっ……」


「日向がハチと一緒に帰る姿見てたらさ……なんか急に寂しくなって、田中先生の顔が見たくなって……それで……」


「うん」


あたしはなぜかこれから続く言葉に緊張してゴクリと喉を鳴らした。


綾乃はそんなあたしに目を細めてフワリと微笑むと、アイスラテを一口飲んでサラリと言ってのけた。


「先生に告っちゃった」


「え……」