「綾乃ぉおおお……」


あたしは綾乃の腕にギュっとしがみついた。


「良かった。会えて……」


「日向……?」


綾乃はそんなあたしの様子に戸惑っているようだ。

「何があったの?」とでも言いたげな、不思議そうな目をあたしに向けている。


「さっき、春奈に会ったの……」


綾乃はそこでようやく状況を把握してくれたようだった。


「そか……。それであたしのこと心配してくれたの?」


「ん……だって電話も通じないんだもん」


あたしはコクコクと頷いた。


「あー。ごめん電池切れてて。でも……ありがとね」


「ん……」


その時、あたしの頭にポンッと何かが乗せられた。

蓮君の手だ……。


「良かったな」


蓮君はにっこり微笑んであたしの髪をくしゃくしゃと撫でた。


「蓮君……ありがと」


「じゃ、オレはもう行くから。二人でゆっくり話しなよ」


背を向けて立ち去ろうとする蓮君をあたしは呼び止めた。


「蓮君! ごめんなさい。話があったんだよね?」


あたしは公園でのことを思い返していた。

たしかあの時、蓮君が何か言いかけたところで春奈が登場したから、中断してしまったんだよね。


蓮君は一瞬、「あ――……」と呟いて首の後ろをポリポリと掻いた。


「オレの話はいいや。また今度な」


そう言うと手をヒラヒラさせてそのまま去って行ってしまった。


あたしと綾乃はそのまま近くのコーヒーショップに入ることにした。