「とにかく、電話してみれば?」


蓮君の言葉にハッとする。


「う、うん。そうだよね……」


あたしは携帯を耳にあてる。


だけど聞こえてくるのは、機械的なアナウンスばかり……。


「どうしよ。電源切ってるみたい……」


自宅にもかけてみたけど、つながらない。


「どうしよう……どうしよう……」


「落ち着けって。とにかく探しに行くしかねぇだろ。綾乃ちゃんが行きそうなところ、心当たりないのか?」


あたしはさっきの春奈の言葉を思い出す。


「さっきまで駅前のマックにいたって……」



「行くぞ」


「えっ……」


「ほらっ」


動き出せずにいるあたしの手を蓮君が取った。


あたし達は走り出す。


――綾乃。

あたしは綾乃を見つけられるのかな……。


不安で押しつぶされそうになって、蓮君の手をギュッと握った。


蓮君は一瞬だけちらりと振り返って、何も言わず、ただあたしの手を強く握り返してくれた。


その手のぬくもりが

――心配すんな

――安心しろ

って言ってくれてるような気がして……


ただただ蓮君の広い背中を見ながら彼について足を動かした。



その時のあたしには、


なんの根拠もなかったけど……。

蓮君なら、あたしを綾乃のところまで導いてくれるんじゃないかって


……そんな気がしたんだ。