「みんなって……綾乃も? 綾乃も知ってるの……かな?」


「知ってるよ! だって、うちらさっきまで駅前のマックに一緒にいたんだもん。この話題でもちきりだったっつの」



――綾乃。

あたしは震える手でギュとスカートを握った。



「……日向?」


気が付くと目の前で春奈が不思議そうな目であたしを見てる。


「あ、ごめん。……で、綾乃は? 今どうしてんの?」


「さぁ。もうしばらくブラついてくっていうから、あたしだけ先に帰ったんだ」


「そっか……」


「うん。じゃ、あたしもう行くね!」


満面の笑みでそう言い残して去っていく春奈を見送った。


あたしは足がすくんでその場から動けずにいる。


――どうしよう。


「……おい。日向? どうかした?」


いつの間に近づいていたのか、蓮君の手があたしの肩にポンと乗った。

その温かさを感じた瞬間、急に今まで張り詰めていた緊張がほどけた気がした。

視界がじわりと歪んで目の縁に水分が溜まる。


「どうしよう。どうしよう……」


あたしは振り返って、蓮君の胸にすがりつく。


「おい、落ち着けって。日向っ」


「だって……。綾乃が……綾乃が……」


「とりあえず、話してみろって? な? 何があった?」


蓮君はまるで子供にそうするみたいに、かがみ込んであたしの顔を覗き込む。


「ん……」


あたしは小さく頷くと、今春奈から聞いた話をそのまま蓮君に聞かせた。