その言葉に驚いて振り返ると、目を細めて優しい表情であたしを見る蓮君がいた。


「お前がなんで23歳のOLのふりしてんのか知んねーけど。ホントのこと言えばいいんじゃないの? そのまんまのお前を読者に知ってもらえよ?」


「えっ……。それって、わたしが実は高校生だってこと、カミングアウトしろってこと?」


「ああ。で、小説もお前が思ったこと、感じたこと……そのまま書けばいいんじゃないの?」


「そんなのできないよ……」


「なんで?」


「だって小説なんだよ? 読者は夢のある物語を期待してるんだもん。だからあたしは妄想を膨らませてありもしない夢のような恋愛を書いていたんだ。あたしが今感じてることをそのまま書いたって、面白くもなんともないと思う……」



「そうかな」


「え?」


「お前の小説の読者は女子中高生がほとんどなんだろ? だったら、お前の書く等身大の恋愛にだって共感できる部分はあんじゃねーの? お姫様と王子様の恋愛じゃなくてもさ……」


「……」


「オレ……思うんだけどさ、きっと大人になったら逆に書けねーことってたくさんある気がする。現実知って……色んなことに限界感じて、自分で常識の範囲を決めちまって。柔軟な発想とかできなくなるんだよ」


「うん……」


「だから背伸びしねーで、お前の目線で、今のお前にしか書けないことをさ……自信持って書けよ」


「蓮君……」


「うわっ。泣くなって!」