口から漏れた自分の言葉に……自分が一番驚いているかもしれない。

まるで告白してるみたいにドキドキして、胸が苦しくなる……。

蓮君は表情一つ変えず、相変わらずあたしを見つめていた。


「あたし今まで恋なんてよくわかんなかった。でも、今はちょっとだけわかるんだ……。好きな人のこと考えるだけでドキドキしたり、その人の言葉や行動で喜んだり悲しくなったり。すごく苦しくて……切なくて……だけど暖かくて。彼が幸せであれば良いって思う。自分より誰かのことを大事に思うなんて……生まれて初めてだよ」


「そっか」


なぜかそこで蓮君はあたしから顔をそらした。


そのせいで、蓮君の感情が読み取れない。

あたしは今、蓮君のことを考えながら話してるんだけど、何か少しでも伝わってるのかな……。


「でも、現実は小説みたいにうまくいかないね……。そう思ったら、今まで書いていた妄想だらけの小説が急にバカバカしく見えてきたんだ」


言いながら、やっぱり声が震え出した。

やだっ……。

なんか泣きそう……。


あたしはわざと声のトーンを上げた。


「それにね。あたし読者にずっと嘘ついてたの。23歳のOLだって。ほんとは、こんな冴えない女子高生なのにね……。だから、読者が想像してるあたしは、本当のあたしじゃないんだ。読者が求めるあたしと、リアルなあたし……そのギャップにも、もう疲れちゃった」


蓮君は相変わらず黙ったままだった。


――チリリン……。

その時ふいに風が吹いたかと思ったら、どこからともなく風鈴の音が響いた。