「場所移動するなら言ってくれよー。探したじゃないか」


そう言いながら彼はこちらに近づいてくる。



「彼は森本。あたしの彼氏なの」


律子さんが、その男性をあたしに紹介してくれた。


「それからこっちは日向ちゃん。ほらっ。蓮哉の幼馴染の……。今偶然会ったのよ」


「ああっ……蓮哉くんの……」


森本さんも蓮君から何か聞いてるんだろうか、一瞬目を丸くしてからにっこり微笑んだ。


「こんにちは、日向ちゃん」


目の前に立った森本さんを見たあたしの感想。

――正直、すごく意外だった。

律子さんは一般的に言えば美人の部類に入る方だと思う。


一方の森本さんはいわゆる“小太り”って体型だ。

身長だって、律子さんの方が高いように感じる。

丸顔でメガネの縁が頬に食い込んでいる。

走ってきたせいで額には大粒の汗が浮かんでいて、そのいくつかはすでに頬を伝って流れていた。

息を切らせてふーふー言ってる。


お世辞にもかっこいいとは言えないような人だ。

でも優しそう。

人の良さそうな感じがその笑顔から滲み出ていた。