ただひたすら涙を流していると、蓮君に引き寄せられた。

そして掴まれたままだった手首の圧迫感がなくなったと感じた瞬間、あたしの目の前に蓮君の胸があった。


「悪ぃっ……。言い過ぎた……」


蓮君は触れているか触れていないかわからないぐらい遠慮がちに、あたしの髪を優しく撫でる。

何も身に纏っていない蓮君のひきしまった胸板があたしの頬に当たる。

体温が直に伝わって、鼓動まで聞こえてきそう。


だけど今はこの状況が苦痛でしょうがなかった。


あの人を抱いた胸で、あたしを抱きしめているんだと思ったら、嫌で嫌でたまらなかった。


「やぁ……」


あたしは力を込めて蓮君の体を押しのける。


蓮君は長い前髪の向こうから大きな目でじっとあたしを見つめる。






「日向……オレのこと嫌い?」