蓮君はあたしの手首を強く掴んでいた。


「ちょっ……待てよ。オレ、お前に話あんだけど」


「やだっ」


あたしは蓮君の腕を振りほどこうとした。

だけど蓮君の力が強くて、上手く振りほどけない。


――嫌だ……。

あの人を触った手で、あたしに触れないでよ。


「蓮君……あの人と何やってたの?」


気づいたら、そんなストレートな質問を投げかけてしまっていた。


蓮君はあたしから目をそらす。


「そんなこと……お前は知らなくていいの」


――また子供扱いする。


なんで?

美雨ちゃんと付き合ってんでしょ?

男の人って、浮気とか平気でするもんなの?


あたしの頭にはある物が浮かんでいた。

それは以前この部屋で見つけたファイルに閉じられた、蓮君とたくさんの女性との写真。

やっぱり蓮君ってこんな風に不特定多数の女の子と遊んでるんだ。




「蓮君って……サイテー……わけわかんないよ」


あたしは精一杯、蓮君を睨んだ。

そうでもしないと、力を抜いたら今すぐにでも涙がこぼれそうだったから。



恋人の妹に浮気現場を見られて蓮君はどうするだろうか?

ウソついて誤魔化す?

それとも謝る?

口止めする?


だけど、蓮君が口にしたのは、あたしが想像していたような言葉ではなかった。





「わけわかんないのはお前だろ……?」