で。

――結局来てしまった。


今あたしは蓮君の部屋の前にいる。

美雨ちゃんにウソついた手前、このCDをいつまでもあたしが持ってるわけにはいかない。


そう判断したあたしはいてもたってもいられず、翌朝登校前に蓮君のマンションを訪れたのだ。


なんて理由付けしてるけど……。

本心では蓮君に会いたい、顔が見たいって思ってる自分もいる。

でも、そう思ってしまうこと自体、美雨ちゃんに悪いことしてるような気もして……。


こんな気持ちのまま会うのはほんとは良くない。

だから、これで最後にするから……

――今日だけ許して、美雨ちゃん。



スゥ……

大きく息を吸い込んでから、チャイムを鳴らした。


ピンポーン……


心臓が壊れるんじゃないかってぐらいドキドキしながら待つ。

その数秒がずいぶん長い時間のようにも感じられる。


あれ?


いくら待っても蓮君は出てこない。

ひょっとして……留守?

こんな朝早くから?

朝なら絶対いると思ったからあえて連絡せずに来たんだけどなぁ……。


それともまだ寝てるのかな?

出直すべきか……それとも電話してみる?

どうしようかと扉の前でおろおろしていると、ドア越しにガチャガチャと鍵を開ける音が聞こえた。


――なんだ……いるんじゃん。


ホッとしたのもつかの間。

その瞬間、あたしの心臓はドクンと音を立て、体はガチガチに固まってしまう。