「キミは頭がいいからわかるよね?」


「先生……」


――“先生”。

その言葉にあたしの予想は確信を得た。

“先生”は何か言いかけた女の子の言葉を優しく遮った。


「もう行きなさい。こんなとこ見られたら、キミが傷つくことになるんだよ?」


女の子は小さく頷くと、消え入りそうな声で「失礼します」と言って部屋を出て行った。


ど……どうしよ。

すごい現場を目撃しちゃった。

生徒が先生に告白するなんて。

あってもおかしくないけど……。

それこそ漫画や小説の中だけの物語のように感じていた。



「お前ら、盗み聞きとは趣味が悪いな……」


頭上でそんな声がして、慌ててあたしは顔を上げた。


そこには、いつの間に側まで来ていたのか……

あたし達を見下ろすように


数学の田中先生が立っていた。