「な、なによー! あたしの誕生日も聞きなさいよー! んで、なんか頂戴!」


あたしはわざとおどけてみせた。

て、これって墓穴掘ってる気もするんだけど……。



「お前の誕生日は、聞かなくていーの」


――ほらね。

軽く流されちゃった……。

ああっ。

なんであたしは、自分の首を絞めるような発言ばかりしちゃうんだろ。

言わなきゃ良かったな……あんなセリフ。


「ふんだ……。ばかー!」


あたしは手にしていた鞄で蓮君の背中を叩いた。


「いでっ」


そしてくるりと背を向けた。


「じゃ、もう帰るね」


「送るよ」


「いいって! 一人でも大丈夫!」



あたしは蓮君の返事も待たず駆け出した。


もう、限界……。


角を2つ曲がって、後ろから誰もついてきていないことを確認する。



「……うっ……」


その場で崩れるようにしゃがみこんだ。

瞬きした瞬間、ずっと我慢してた涙が溢れて頬を伝う。


わかってたことなのに。

それでも、いつもほんの少し期待しちゃうの。

そして何度も現実を突きつけられてしまう。


蓮君が美雨ちゃんを好きだっていう事実。



せめて相手があたしの知らない人なら良かったな。


美雨ちゃんにあたしがかなうところなんて一つも見つからないや。



そっと顔を上げて夜空を見上げた。


星が涙で滲んでいつもより大きく輝いて見える。


キラキラと瞬く星は、どんなに手を伸ばしても届くことはなくて、まるで蓮君と美雨ちゃんのように眩しく見えた。