ええっ?

あたしはポカンと口を開けたまま蓮君の顔を見上げた。


「前に言ってたじゃん?『またキス教えて』って」


い……言った。

たしかに言った。

あれはたしか、蓮君んちでカレーを作った日だ。

でも、さっきのキスはそういう意味じゃないんだけど。

ま……まさか蓮君、誤解してる?



「別にオレで試してみんのもいいけどさぁ……ふいうちはナシな?」


――て、思いっきり勘違いしてるしぃいいいい!


「こっちにも色々気持ちの準備ってのがあるっつかさ」


「れ……蓮君?」


「ま。あれで良かった? 取材になったか?」


そう言って蓮君は小首を傾げて眩しいほど爽やかに微笑んだ。


ぜっ……


ぜっんぜん……わかってね――――!

いや、むしろ、これで良いのか?

どうせ告っても振られて終わるだけだし。


「ははっ……」


あたしはへらっと笑って蓮君に答えた。


「べ……勉強になりましたデス」


「そっか。なら良かった」


「はは……」



蓮君て、意外に鈍感なんだ……。


ホッとしたような、がっかりしたような……

なんだか複雑な気分……。