黙ったままCDをぼんやり見つめているあたしに蓮君が声をかけてくれた。


「え? ……ああ……うん。ありがとう」


「にしても、日向がヤマジシンイチ好きって、なんか意外だな」


「えっ……そっかな」


「どうせ、アレだろ? ルックスが好きとか言うんだろ?」


「そ、そんなことないもん! たしかに最初はそうだったけどさぁ……今は違うもん」


あたしのセリフは尻すぼみになって、最後の方はモゴモゴと言葉を濁しながら呟いていた。


ヤマジシンイチというのは、若手の実力派シンガーなんだ。

だけど、その王子様みたいなルックスから、デビュー当時はアイドルみたいな扱いだった。

正直、あたしも最初はその容姿にはまった一人。

だけど、今は露出を控えてほとんどテレビにも出ないし、ライブ活動が中心になってる。

あたしも今では彼の歌声はもちろんのこと、曲と歌詞の世界観が大好きなんだ。


「ふーん。ま、8曲目が好きってのは、オレも同意見。気が合うね」


いつの間にか傍に来ていた蓮君はあたしの手からスッとCDを抜き取ると、さっきあたしがしたように、8曲目のバラードを口ずさみ始めた。


蓮君の歌声って初めて聴くかも……。

ちょっとハスキーで低い声が、ヤマジシンイチと重なる。

なんか、耳元で囁かれたい気分。



「そんなに好きなら、ライブ行くか?」




「え?」