そう言われて、思わず曲を口ずさむのを止めた。

手の中のCDジャケットをじっと見つめる。


そうだ……。

たしか、あの日……あたしはこのアルバムを買うためにあそこへ行ったんだった。


そして見てしまったんだ。


雨の中、一つの傘の中で寄り添い歩く二人の姿――蓮君と美雨ちゃんの姿を……。

あの時、二人はCD屋から出てきた。

そっか。

このCDはあの日に買ったものだったんだ。


やっと自分の気持ちに気づいたというのに、また現実に引き戻されてしまった。

蓮君が美雨ちゃんを好きだという事実。


あの日、デートしていた二人の姿は今もはっきり記憶に焼きついている。

そして、雨の中ずぶ濡れのまま……

身動きできなかった、あの日の惨めなあたしの姿も……。



「それ、良かったら持って帰れば?」