あたしは四つんばいのままドタバタとCDラックの方へ体を進めた。


「……なんだよ。んと、騒がしいヤツだなぁ」


背後からは蓮君の呆れたような声が聞こえる。

でも、あたしはそんなのおかまいなしだった。

だって、CDラックに飾ってあったものは……。


「ヤマジシンイチだぁあああああああ!」



「へ? 日向ってヤマジシンイチ好きなの?」


あたしは目に涙を浮かべてウンウンと頷いた。


「もう、超好きだよ―――! デビューアルバムから全部揃えてるもん! これ、この間発売したニューアルバムだよね? ねぇねぇ? 見てもいい?」


「どうぞ」


蓮君は何が可笑しいのか、吹き出しそうなのを堪えているかのような顔して、興奮気味のあたしを見ている。


でも、「どうぞ」って言ってくれたんだからいいよね。

あたしはラックを開けて、扉部分に収納されていたヤマジシンイチのアルバムを取り出した。


「きゃ――。これ、早く聴きたかったんだぁ……。8曲目のバラード、最高だよねー」


あたしは、フフフーンて感じでその曲をハミングした。


「お前、そんな好きなのに、そのアルバムまだ買ってねーの?」


「え……」