「グスっ……。ごめんね? もう大丈夫」


あたしはゆっくりと蓮君の胸の中から顔を上げた。

――と、同時に体が硬直した。


だって……

だって……

蓮君の顔がすぐ傍にあったんだもん。

そのあまりの距離の近さに、改めて今自分が置かれている状況を把握する。


あっ……あたしってば、今蓮君の腕の中にいるんだ。


とたんに、さっきの落ち着いた気分はどこかへ吹っ飛んだ。

代わりに、わたしの心臓はこれでもかってぐらい早く脈打つ。

顔も体もじんじんと熱くなる。



「おい? 大丈夫か?」


耳元で蓮君の声がする。

いっ……息が……。

耳にかかる……。





「き……きやあああああああ!」