高橋さんは終業時刻が待ち遠しい。いくら作戦のためとはいえ、宮川さんと二人きりで飲むのだ。あらぬ妄想も飛び出してしまう。
ランチ。高橋さんは屋上で母親お手製の弁当を開ける。いつもと変わらない日々。でも今日から変わるかもしれない。期待と不安でいっぱいだ。こんな気持ち、ずっと忘れていたな。
一人感慨に耽っていると、隣にまた石川くんが座ってきた。そして唐突に、
「先輩、なんか僕に対してワラ人形とかで呪ってません?」
と聞いてきた。
「なんだ藪から棒に。そんなことするわけないだろ?」
「じゃぁいいんすけど…なんか毎晩同じ夢見るんすよ」
…おいおい、まさかだろ?
「どんな夢だ」
「なんか汚いジジイが出てきて、高橋さんに協力しろ、彼は勇者だからこの国を変えるんだとか言ってて、ついに昨日なんか逆らったら殴られましたからね」
と、右の頬をさすっている。
「まさかお前もか…実はだな…」
高橋さんは自分もうなされていること、宮川さんも同じ目に合っていること、そして今夜飲みに行くことを打ち明けた。飲みの件は、黙っていようかと思ったが、仕方ない。石川くんも仲間らしいし。
「マヂすか?いやこれは何かありますよ!ぢゃ今夜オレも行きます!」
案の定、石川くんは返事した。