「ただいま〜」

おざなりに玄関口で声を上げてから中に入る。

父親も母親も、ワーカーホリックで、朝から晩まで飛び回っているから、家には誰もいない。

小さい頃から鍵っ子だったオレの、可愛い習慣ってやつだ。



居間にも寄らず、真っ直ぐ2階の自分の部屋に入ると、ジーンズだけ脱ぎ捨ててベッドに寝転ぶ。

昨日は家に帰っていなかったから、携帯の充電が切れていたのだ。

充電器を差し込み、復活した携帯の電源を入れると、そのままの状態で携帯をチェックする。

『ミユ』

『カオリ』

『サキ』……

ダラダラと続くメールをスルーして、

『吉野亮太』

で手を止める。

…オレにとって、きちんと友達だと認めたやつだけはフルネーム登録してあるのだ。

まあ、数は少ないけどね?


時間も確認せずにすぐに電話をかける。

『拓海?』

「うぃーす」

『うぃすじゃねー。また学校来ないの?』

亮太の周りはザワザワとしている。

ふと目を上げて時計を確認すると、ちょうど昼頃だったから、食堂にでもいるのだろう。