「まだ返事は要らないよ。」

そう言った稀癒は自信があるように、妖しく笑う。


今、あたしは断ることを考えた。
でも稀癒はあたしの大切な友達だ。
今更恋心を持つ訳では無いけれど、断る事によって離れて行ってしまうのは耐え難い。

でも、答えを急かさないで居てくれて助かった。
何だか甘えているみたいで罪悪感が残ってる。


しかも脳ミソは明らかにキャパオーバー。
整理する時間が欲しい。
でもそんな時間は与えられなかった。


「話の途中で悪いけど、慶華ちゃんに話があるから連れてくねえー。」

話し方は普通でも有無を言わせぬ圧力が雰囲気に有る。

手を掴まれて壱貴に引かれていくあたしに淋しそうな顔で稀癒は


「またね。」

と言った。

小さくなる彼に手を振りながら脚が縺れないように必死に付いていく。