「稀癒クン、って言うんだっけえ?なんで俺だって分かったのおー?」

いつもの調子で話し掛ける彼の声色はどこかいつもと違う気がした。
気のせいかもしれないけど。

突然話を振られた稀癒はハッとして慌てて応え出す。


「えっと俺、WingDingのファンで、ずっと好きだったっていうか、初期から気に入っていたんですけど、あ、俺は稀癒って言います!禾偏に希望の希と病気が癒えるって意味の癒です!で特にカズさんのファンでカズさんの書く曲は全部凄くて尊敬してて、それで――…」

「「ストップ」」

見事、壱貴と重なった。

もう、稀癒の興奮と感動の入り雑じったマシンガントークに付いていけない。

何故止められたか分からない、と言いたそうな表情の稀癒。
例えどんなに聞き上手でも、あんなマシンガントークには付いていけないだろうと思う。


うんざりした顔で隣の壱貴を見た。

唯ただ苦笑いを浮かべた様子の彼。
一方、稀癒はさっきとは打って変わってキラキラした瞳で一心に壱貴に観入っていた。