「言いたいことは、理解できたよおー。でも、もし俺の事を好きになったらいつでも言ってねぇ。」

いつもの表情で言ってくれることが自棄に嬉しく感じる。


「ん、じゃあこれからも諦めないから。覚悟しといてね?」

妖艶な笑みを浮かべて稀癒も返事をする。

ホッとしたあたしは気が抜けて、思わずその場に座り込んだ。


「話は終わったから今日は繁華街、お客さんで行ってみない?」

そう誘う稀癒はもうベンチから立ち上がっている。
それにつられて立ち上がると、壱貴も立ち上がる。


繁華街までの道程は、さっきの空気が嘘かのような様子だった。